副業につながるスキル
動画編集を副業にするまでの流れと詰まりやすい場所
動画編集の副業でつまずくのは編集技術より、制作物の用意と受注後の運用です。学習から納品までを4つの工程に分け、それぞれの詰まりどころと、会社員が始める前に確認しておく項目を整理しました。
この記事でやること
- こんな人に向けています
- 動画編集を副業にしたいが、学習から受注までの流れが見えていない社会人
- 読み終えたときの状態
- 受注までに必要な工程と、自分がいまどこにいるかを把握できる状態
編集ソフトの操作を一通り覚えて、練習用の動画も何本か作り終えた。それでも応募画面を開くと、提案文の入力欄で手が止まります。書けるのは「丁寧に対応します」「未経験ですが頑張ります」くらいで、相手が知りたいであろうことが何も書けていない。動画編集を副業にする過程で最初に起きる停滞は、たいていこの形をとります。
止まる原因は編集技術の不足ではありません。提案文に書くべき材料——どんな依頼を、どの水準で、どれくらいの時間で仕上げられるのか——を、まだ自分が持っていないからです。この材料は編集の練習では作られません。別の工程で作ります。
動画編集を副業にするまでの流れは、編集技術・制作物の用意・受注経路・納品運用の4つに分かれます。このうち教材や情報が最も充実しているのは編集技術で、脱落が起きるのは残りの3つです。以下では工程ごとに、通過したと言える状態と詰まる理由を分けて扱います。
動画編集の副業は4つの工程に分かれる
4工程は独立していません。前の工程の不足が、次の工程に入ってから別の形で表面化します。編集技術が足りないまま受注すれば、納品の工程で修正が増えます。制作物がないまま応募すれば、選ばれない理由が分からないまま応募だけが積み上がります。
| 工程 | 通過したと言える状態 | そこで詰まる理由 |
|---|---|---|
| 編集技術 | 指定された尺と構成で、作り直しなしに1本仕上げられる | 学ぶ範囲に終わりがなく、どこで切り上げるかを決めていない |
| 制作物の用意 | 依頼者が「これと同じものを」と言える見本がある | 練習作品はあるが、誰に向けて何のために作ったのかが書かれていない |
| 受注経路 | 応募先または連絡先が具体的に決まっている | 経路ごとに準備物が違うのに、複数を同時に中途半端に試している |
| 納品と修正対応 | 修正依頼が来ても、追加の作業量を見積もれる | 修正に含む範囲を先に決めていないため、作業が際限なく増える |
自分がどこで止まっているかは、直近1か月で最も時間を使った作業を見れば判別できます。編集の練習に時間を使い続けているなら、工程1から先に進んでいません。
編集技術は「どこまで」を決めないと終わらない
編集技術の学習には終わりがありません。カットとテロップができるようになると、次はモーション、色調整、音の整音、サムネイルと続きます。すべてを習得してから受注しようとすると、いつまでも準備段階から出られません。
副業の入口で求められるのは表現の幅ではなく、指示どおりに仕上げる再現性です。依頼側が困るのは「凝った演出ができないこと」ではなく、「指示した箇所が直っていないこと」と「納期に間に合わないこと」です。この2つを外さない水準まで届けば、受注の工程には進めます。
範囲の決め方は逆算です。自分が受けたい依頼に近い完成動画を3本選び、使われている要素を書き出します。テロップの出し方と表示時間、カットの間隔、効果音が入る位置、話し声の処理。書き出した要素の集合が、当面学ぶ範囲になります。そこに入っていない技術は、必要になってから覚えます。
3本を分解すると、多くの場合「演出の種類は思ったより少なく、同じ処理が繰り返されている」ことが分かります。ジャンルごとに型が決まっているためで、その型を再現できることが最初の到達点です。
独学で進めるか講座を使うかは、詰まっている内容で判断できます。操作方法が分からないだけなら、調べれば解決します。作ったものの良し悪しを自分で判断できない、直すべき箇所が分からない、という詰まり方をしている場合は、他人に見てもらう仕組みが要ります。この線引きはオンラインスクールと独学は何が違うのかで扱っています。
最初の制作物は、依頼が来る前に自分で作る
実績がないと受注できず、受注しないと実績ができない。この循環は、依頼を待たずに制作物を作ることで抜けます。ただし、練習で作った動画をそのまま並べても制作物にはなりません。見る側は、その動画が何を目的に作られたのかを知らないので、良し悪しを判断できないからです。
制作物にするには、条件を自分で設定して添えます。
- 想定した依頼者(どんな発信者か、どんな業種か)
- 動画の目的(視聴者を増やしたいのか、商品の使い方を伝えたいのか、記録として残したいのか)
- 尺と、掲載される場所の想定
- 実際にかかった作業時間。これは後で見積もりの根拠になります
条件を書くと、見る側は「自分の依頼に置き換えるとどうなるか」を想像できます。提案文に書ける材料が増えるのも、この段階です。
素材は権利関係で事故が起きやすいところです。他人が公開している動画を許諾なく再編集して公開する行為は、練習であっても避けます。素材配布サイトを使う場合も、商用利用の可否とクレジット表記の要否は配布元ごとに条件が違うので、ダウンロードする前に規約を読みます。自分で撮影した映像を使えば、この問題は起きません。
本数は、ジャンルをばらけさせて5本作るより、同じ型で3本作るほうが伝わります。毎回違うものが1本ずつ並んでいると、何を頼める人なのかが読み取れません。同じ型が並んでいれば、その型の依頼なら出せると判断されます。
見本の水準にも注意が要ります。時間を無制限にかけた1本を見本にすると、同じ水準を通常の納期で求められます。継続して出せる作業時間で仕上げたものを見せてください。
受注経路は型ごとに詰まる場所が違う
受注の経路には型があり、必要な準備も最初の1件までの距離も違います。
| 公募型プラットフォーム | 直接営業型 | 下請け・紹介型 | 発信起点型 | |
|---|---|---|---|---|
| 最初の1件までの距離 | 短い。応募できる募集が常にある | 中程度。連絡先を自分で探す手間がかかる | 長い。人づてのきっかけが前提になる | 長い。作例が溜まるまで反応が出ない |
| 主に必要な準備 | 見本と、募集ごとに書き分ける提案文 | 相手の動画を見た上での具体的な改善提案 | 指示どおりに仕上げる再現性と納期の安定 | 作例を継続して出し続ける習慣 |
| 条件の決まり方 | 提示された条件に応じる形が中心 | 交渉の余地は大きいが、自分で条件を組み立てる必要がある | 発注元の基準に合わせる | 問い合わせを受けた時点で自分から提示する |
| 続けたときに起きること | 応募と選考のやり取りに時間を取られやすい | 関係が続けば安定するが、相手の事情に左右される | 作業量は読みやすいが、自分の名前は表に出にくい | 反応が出るまでの期間が読めない |
最初は1つに絞ります。準備物が違うことと、切り分けができなくなることの2つが理由です。3つを同時に走らせて反応がなかった場合、経路が合っていないのか、制作物が弱いのか、提案文が悪いのかを判別できません。1つに絞れば、変える箇所を1つずつ試せます。
絞り方の手がかりは、確保できる時間の形です。平日の夜に30分ずつしか取れないなら、提案文を書いて送る作業は細切れにできるので公募型が回ります。休日にまとまった時間が取れるなら、相手の動画を見て提案を組み立てる直接営業型が生きます。映像や広告に関わる知人がすでにいる場合は、下請け・紹介型が最短になることもあります。
納品と修正のルールは受注前に決める
編集そのものより、やり取りのほうが時間を食います。ここを設計しないまま受けると作業時間が読めなくなり、続けられなくなります。
受注前に決めて、文字で合意しておく項目は次のとおりです。
- 修正の回数と、修正に含む範囲。テロップの誤字直しと構成の作り直しを、同じ「修正1回」に入れない
- 素材の受け渡し方法と、素材が揃う期限。素材が遅れた場合に納期がどう動くかも先に決めます
- 納品するファイルの形式と解像度、書き出し後にどこで確認するか
- 連絡がつく時間帯。会社員の場合、日中に即答できないことは最初に伝えます
修正が膨らむ典型は、完成間際に全体の方向性を変えられる場合です。工程の途中で確認を挟むと減らせます。テロップを仮の状態にしたまま、構成とカットだけの段階で一度見てもらい、方向性の合意を取ります。完成後に方向性が変われば作り直しですが、構成段階なら差し替えで済みます。
やり取りは通話だけで済ませず、文字で残します。修正の指示が口頭で来た場合は、こちらで箇条書きに書き起こして送り返し、認識を合わせてから着手します。
会社員が始める前に確認しておくこと
始める前に確認するのは、就業規則と、自分が実際に使える時間です。
就業規則では、副業の扱いが会社ごとに違います。禁止か、許可制か、届出制か。申請が事前に必要か。競業とみなされる範囲がどこまでか。あわせて服務規律の条項も読みます。会社の設備や回線を使わないこと、勤務時間中に作業しないことは、副業が認められている会社でも別に定められているのが通例です。編集作業は端末とソフトを使うため、この点が具体的に効いてきます。
依頼内容によっては、公開前の商品や告知の情報を先に受け取ることがあります。守秘の扱いを口頭で済ませず、どこまでを外に出さないかを文字で確認します。制作した動画を自分の制作物として公開してよいかどうかも、受注時に聞いておく項目です。納品後に聞くと断られやすくなります。
稼働時間は、見込みではなく記録で把握します。1週間、平日の夜と休日に実際どれだけ作業に使えたかを書き出すと、想定より短いことがほとんどです。この実測値がないまま納期を約束すると、本業の繁忙期と重なった時点で破綻します。出張・決算期・家庭の予定など動かせないものを先にカレンダーへ入れてから、受けられる本数を決めてください。
副業の所得が一定の条件を超えると、確定申告が必要になります。基準と手続きは制度として決まっているので、国税庁の案内で確認してください。売上と経費の記録は初回の受注時点から付け始めるほうが、年度末にまとめて思い出すより手間がかかりません。
やめる理由の多くは編集そのものではない
途中でやめた場合の理由を工程に当てはめると、編集作業が嫌になったというケースはあまり多くありません。起きているのは次のような事態です。
作業時間を実測していないため、割に合わないと感じる。 1本目から工程別(素材整理・カット・テロップ・書き出し・やり取り)に時間を記録すると、2本目以降は自分の数字で判断できます。
修正の範囲を決めていないため、終わりが見えない。 受注前の取り決めで大半は防げます。すでに始まってしまった案件については、次回から適用する条件として先に伝えておきます。
本業の繁忙と重なったときに逃げ道がない。 納期を先に約束しているため、調整の余地が残っていません。同時に抱える本数の上限を決めること、納期を相手の希望より少し後ろに置くことで対処します。
準備段階から出られない。 学習と練習を繰り返して、応募に進まない状態です。この場合は技術を足しても状況が変わりません。日付を決めて、その日までに応募すると先に決めるほうが動きます。学習そのものが止まりやすい場合は、原因が計画の作り方にあることも多いため、社会人の学習が途中で止まる理由を先に読むほうが早く解けます。
最初の1か月で何をやるか
順番を決めておくと、どこで止まったかが後から分かります。
1週目は確認に充てます。就業規則の副業に関する条項を読むこと、1週間の可処分時間を記録すること、参考にする完成動画を3本選んで要素を分解すること。ここで副業が認められていないと分かれば、制作物を作る前に方針を変えられます。
2〜3週目は制作物です。1週目に分解した型で、同じ型の動画を3本作ります。各本に、想定依頼者・目的・尺・作業時間を書き添えます。作業時間の実測はこの段階から始めます。
4週目に受注経路を1つ選び、応募または連絡を始めます。この過程で講座を使うか迷う場面が出てきますが、副業を目的にする場合に見るのは転職支援の有無ではなく、作ったものへの指摘が受けられるかどうかです。判断の基準は社会人向けITスクールの選び方で扱っています。身につけた編集スキルを本業の側でも使いたい場合は、学んだことを仕事に持ち込む方法が別の使い道を示します。
4週目までに応募まで届かなかった場合、原因は編集技術ではないことがほとんどです。制作物に条件が書かれていないか、経路を絞れていないかのどちらかなので、その2つを先に見直してください。技術の練習に戻るのは、その後で構いません。